1級建築士事務所 もくもくSTUDIO

対談 talk

建て主に聞くもくもくstudio石井啓介 家づくりを楽しむーライフスタイルを大事にした住まい / N夫妻 新しい事業に挑戦する地域をひらくショップづくり/ 港南台タウンカフェ (株)イータウン 斉藤保氏
対談

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N妻:

それをさぐり合い、お互いがどうというところまでに届くまで、時間がかかるのでしょうけど、うちは、会った時からこういう感じだから、遠慮もないし…。
(逆に、知り合いだから仕事のことになるとどうかという心配もありますよね。)

N夫:

そそうですね。実は、なぜ最初にすぐ石井君のところに行かなかったのかということは、今だから話そうという部分があって。
ボクの高校の時の後輩が家を建てたんですよ。その頃ね。それで、彼の高校の時の同級生が建築家になってたんでそいつに設計を頼んだということなんですが、「いい家できて良かったね」て、言ったら、「いや〜、あいつに頼んだのは、いいんだけど、あまりに親しいモンだから、勝手なことやるんだヨ」て、ボヤくんですよ。要するに日頃いろんな工務店やなんかの仕事をしていて、カセというか…建築家として、なかなか自分の思うような家が造れないっていう状況にあったらしいんです。そんなときに親しい友人からの依頼ということで「いい機会だ」みたいな感じで、気心が知っているが故に建築家が自由にやった部分があって、それで、私の友人がぼやいたわけです。
だから、あまり気心知れてるのも、もしかしたら、「やばいんじゃないか」っていうような不安がちょっとあったもんだから、あのぉ〜、最初は、ホントは、心配してたんです。でも、まあ、石井君のことは、信頼してたんで…実際やってみればそんなことは、ぜんぜんなかった。
気心知れていることが、かえってすごく良くて・・・こっちも平気で提案できたりして。

ふつう、こう、(家が)できあがってくる途中でも変えちゃったりすることがある時、相手が仕事だけでつきあってる人だと変えてもらうの頼むのもやっぱり、言いずらいじゃないですか。そういう面では、すごく柔軟でね…。だめならだめで、しょうがないんだから。言いやすかったですよ。

石井:

親しいなら親しいで難しさはあるけど、そうじゃない場合、どういう人なのかというのは、手を動かしながら、案を出し合いながら、進めつつ、互いの人となりがわからないからと…そのために費やす時間って、結構あるんだよね。それが、実は、基本設計の大切なところだと思う。

斉藤:

ボクの場合も設計士さんとちゃんとおつきあいしたことなかったので、石井さんに相談した時に、「じゃぁ、やろうか」という話になっても、「いや、こっちは、頼むカネもないし」(笑)。で、予算いくらあるんだって聞かれても、ないわけですよ。どっか会社から500万もらってやるっていう話でもないですし。でも「大丈夫心配ないから」っていっても、ボランティアでやってもらうわけにもいかないし。

多分、話を聞いてもらって、ある程度形に見えるようにしないと、コストも決まらないし、設計料も決まらない。こっちは、5万のものなのか、200万のものなのかわからない中で、話が進んでいくその難しさって、ありますよね。
(港南台タウンカフェの場合、設計を進めながら、斉藤さんが多方面に働きかけ、地元商店街連合会の協力や自治体の助成金を確保できた。)

石井:

予算があるっていっても、予算がないといっても、例えば、シュミレーションしてみないといくらかかるかわからない。そうしないと、予算のたちようがない、というケースも結構多い。だから、たたき台が無いとどうしようもない。

斉藤:

たとえば○○ホームとか●●林業の家とかは、このくらいの坪数でいくらとか、なんとなく見えるじゃないですか?

N妻:

そうそう、いくら払ったら、これが手にはいるって。

斉藤:

それが全くない状況でつくっていくので、○○ホームだったら、3000万でできるものが、設計士さんに頼んだら2000万で出来ますよというのもわからないし、頼むと3000万が5000万になるのかも知れないし…とか頭をよぎるのが世の中のほとんどの方ではないでしょうか。

石井:

できあいのものを見て、これでいくらだから予算に合うとか、合わないとかわかりやすいんだけど、実は、ボク(建築家)らがからむというのは、まったくゼロから造り上げ、世界で一つのものしかないわけだから。どうつくるかも全貌は、みんな協同でつくっていくので、見えないわけよね。でもそれじゃ困るので、ボクらの職能として、ひっぱっていく。そして、見えるような形にしていって、タタキ台をどんどんつくって行って、トントントンとやって(笑)、じゃあ「完成型は、こんなんだ」というとこまで、もっていくまで結構時間がかかる。

それから、さっき言ってたように、何でも聞いてくれるというのは、ある時期は、そうかもしれないけれど、それを出していった中で、「その中でもこれは、止めとこうよ。」「でも、これは、やろうよ」といいながら、その中で、「大ストーリーが何か」というのを探す作業に大変な時間がかかるんだよね。お互い。それが1本決まれば枝葉は、どうでもいいわけで、やっぱしその〜、大骨がど〜んと、ストーリーが決まったらしめたもの。

斉藤:

あるデザイナーが、たとえば「こんな家をつくっています」というのがあると、自分のイメージに近いからこのデザイナーにとかいう選び方をしているやり方もあるようで、そういう入口からもアリなんでしょうけど。今度、実際に(設計を)お願いしてみて、形より、出会ってから、出来るまでの関係づくりのプロセスとか、今、こうして終わってからもおつきあいさせてもらっているんですけど…そこで得られたものがすごく…特にお店をやっていると、一番大きいなと思います。

「コンペ」じゃなくて、ぼくは、「コンパ」みたいな、設計士さんと飲み会するような場がある方がいいんじゃないかなと今ふと思ったんですけど。(笑)

石井:

いいですね。そういうこと(設計)、本来、人にまかせちゃうとつまんないだろうと。住宅なら住宅の設計、それを放棄というと語弊があるけどせっかくの宝物(家づくりの楽しみ)を捨てちゃうのは、もったいないと思うわけ。それこそ、設計者がいるということが主でなくて、自分がそういうのを使いながらやっぱり想いを具体化していく、建物の物理的な空間と形を決めていくことや納まり、材料などを吟味するということは、楽しみを包含しているということなんだよね。これは、さっき斉藤さんが言われたようにプロセスがものすごく貴重なことだと思う。

N夫:

ちょっとずれるかもしれないけど、ボクと石井君の間は、そういう関係ですから、一般的な建て主と設計の人との関係とだいぶ違うとは思うんですけども。例えば、ここを建ててる時も月に1,2回わざわざ石井君に来てもらって(石井は、その頃、奥村珪一建築設計事務所勤務のサラリーマン。中村邸の設計は、プライベートだったので、週末を打合せに充てるという事情)チェックしてもらったりなんかしてたんですよ。
その時は、前の日にうちに泊まってもらって、その当時うちの近くの新秋津っていう駅から河口湖まで、休みの日には、直行便の電車があったんです。それで、前の日我が家に泊まって、翌日朝早く起きて、一緒に、ピクニック気分で行ってもらったりとか。で、なるべくいっぱいいろいろやりたいわけですから、1日いっぱい、夜遅くなっちゃって、最終じゃぁないんですけど、富士吉田って言うところがあって、そこに、でっかいイトーヨーカドーあるんですけど、メシ食う時間もないから、そこの地下で、なんか400円ぐらいの弁当や総菜とか買って、駅のベンチで食って帰って来るみたいな、そういうノリの部分があったのが、それはそれで、楽しかったですよね。

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