対談 talk
対談 |
N妻: |
それをさぐり合い、お互いがどうというところまでに届くまで、時間がかかるのでしょうけど、うちは、会った時からこういう感じだから、遠慮もないし…。 |
N夫: |
そそうですね。実は、なぜ最初にすぐ石井君のところに行かなかったのかということは、今だから話そうという部分があって。 ふつう、こう、(家が)できあがってくる途中でも変えちゃったりすることがある時、相手が仕事だけでつきあってる人だと変えてもらうの頼むのもやっぱり、言いずらいじゃないですか。そういう面では、すごく柔軟でね…。だめならだめで、しょうがないんだから。言いやすかったですよ。 |
石井: |
親しいなら親しいで難しさはあるけど、そうじゃない場合、どういう人なのかというのは、手を動かしながら、案を出し合いながら、進めつつ、互いの人となりがわからないからと…そのために費やす時間って、結構あるんだよね。それが、実は、基本設計の大切なところだと思う。 |
斉藤: |
ボクの場合も設計士さんとちゃんとおつきあいしたことなかったので、石井さんに相談した時に、「じゃぁ、やろうか」という話になっても、「いや、こっちは、頼むカネもないし」(笑)。で、予算いくらあるんだって聞かれても、ないわけですよ。どっか会社から500万もらってやるっていう話でもないですし。でも「大丈夫心配ないから」っていっても、ボランティアでやってもらうわけにもいかないし。 多分、話を聞いてもらって、ある程度形に見えるようにしないと、コストも決まらないし、設計料も決まらない。こっちは、5万のものなのか、200万のものなのかわからない中で、話が進んでいくその難しさって、ありますよね。 |
石井: |
予算があるっていっても、予算がないといっても、例えば、シュミレーションしてみないといくらかかるかわからない。そうしないと、予算のたちようがない、というケースも結構多い。だから、たたき台が無いとどうしようもない。 |
斉藤: |
たとえば○○ホームとか●●林業の家とかは、このくらいの坪数でいくらとか、なんとなく見えるじゃないですか? |
N妻: |
そうそう、いくら払ったら、これが手にはいるって。 |
斉藤: |
それが全くない状況でつくっていくので、○○ホームだったら、3000万でできるものが、設計士さんに頼んだら2000万で出来ますよというのもわからないし、頼むと3000万が5000万になるのかも知れないし…とか頭をよぎるのが世の中のほとんどの方ではないでしょうか。 |
石井: |
できあいのものを見て、これでいくらだから予算に合うとか、合わないとかわかりやすいんだけど、実は、ボク(建築家)らがからむというのは、まったくゼロから造り上げ、世界で一つのものしかないわけだから。どうつくるかも全貌は、みんな協同でつくっていくので、見えないわけよね。でもそれじゃ困るので、ボクらの職能として、ひっぱっていく。そして、見えるような形にしていって、タタキ台をどんどんつくって行って、トントントンとやって(笑)、じゃあ「完成型は、こんなんだ」というとこまで、もっていくまで結構時間がかかる。 それから、さっき言ってたように、何でも聞いてくれるというのは、ある時期は、そうかもしれないけれど、それを出していった中で、「その中でもこれは、止めとこうよ。」「でも、これは、やろうよ」といいながら、その中で、「大ストーリーが何か」というのを探す作業に大変な時間がかかるんだよね。お互い。それが1本決まれば枝葉は、どうでもいいわけで、やっぱしその〜、大骨がど〜んと、ストーリーが決まったらしめたもの。 |
斉藤: |
あるデザイナーが、たとえば「こんな家をつくっています」というのがあると、自分のイメージに近いからこのデザイナーにとかいう選び方をしているやり方もあるようで、そういう入口からもアリなんでしょうけど。今度、実際に(設計を)お願いしてみて、形より、出会ってから、出来るまでの関係づくりのプロセスとか、今、こうして終わってからもおつきあいさせてもらっているんですけど…そこで得られたものがすごく…特にお店をやっていると、一番大きいなと思います。 「コンペ」じゃなくて、ぼくは、「コンパ」みたいな、設計士さんと飲み会するような場がある方がいいんじゃないかなと今ふと思ったんですけど。(笑) |
石井: |
いいですね。そういうこと(設計)、本来、人にまかせちゃうとつまんないだろうと。住宅なら住宅の設計、それを放棄というと語弊があるけどせっかくの宝物(家づくりの楽しみ)を捨てちゃうのは、もったいないと思うわけ。それこそ、設計者がいるということが主でなくて、自分がそういうのを使いながらやっぱり想いを具体化していく、建物の物理的な空間と形を決めていくことや納まり、材料などを吟味するということは、楽しみを包含しているということなんだよね。これは、さっき斉藤さんが言われたようにプロセスがものすごく貴重なことだと思う。 |
N夫: |
ちょっとずれるかもしれないけど、ボクと石井君の間は、そういう関係ですから、一般的な建て主と設計の人との関係とだいぶ違うとは思うんですけども。例えば、ここを建ててる時も月に1,2回わざわざ石井君に来てもらって(石井は、その頃、奥村珪一建築設計事務所勤務のサラリーマン。中村邸の設計は、プライベートだったので、週末を打合せに充てるという事情)チェックしてもらったりなんかしてたんですよ。 |