対談 talk
対談 |
石井: |
ほんとに、ボクは、その当時どの色と言えなかったけどね、今は、いえるね。この色が何の色かっていうのはね、弁柄ってあるでしょ。あの弁柄の一番黒いヤツなの。要するに弁柄っていうのは、錆ですよね。だから、神社の赤だとか、朱だとかものすごくバリエーションあるのね。その中の一番黒いヤツね。黒じゃなくて、焦げ茶の超、黒いヤツなの。それで、尚かつ、和なの。で、田舎の茅葺きのたてもの柱真っ黒でしょ。すすけてね。あれって、もとはみんな、例えば欅なんだけど柱なんかは、それに弁柄の黒いヤツを塗るわけ。 |
N妻: |
養蚕農家なんかの梁って言うのが、私は、好きな色なんです。 |
石井: |
燻されたりなんかして、煤なんだよね。 |
N妻: |
そう、そこがゆずれるか、ゆずれないかっていうところで |
石井: |
あの時は、タッチアップ用のサンプルがあったから、良かった。 |
N妻: |
でも、ペンキ屋さんもやっぱり面白い。ホントに「えっ」というような色を垂らすのよね。すると、変わってくる。 |
石井: |
あれはね、ホント、素人が見ててもわかんないんですよ。やった後に何色になるかっていうのはね、入れてる物とね、できるモノ全然違うから。 |
N妻: |
焼き物の絵付けとか色(釉薬)と同じくらいに・・・「えっー!」というくらい。 |
石井: |
焼いたら何色かに相当するくらい違うの。 |
N妻: |
でも、ペンキ屋さんも、それも、黙々とよ。 |
石井: |
最初、わかんなかったんですけど、実は、3色でつくっちゃうの。おおきくいうと。それが最初わかんなくてさ。「えっ」っていうのがある。 |
N妻: |
みどりだか、なんかヘンな色いれたのよ。そしたら、あ、できたっていう感じになったから。 |
石井: |
だから、発色よりは、この、くすませるとか、濁すとかそういうのがね・・・ (また、そういう仕事をじっと見ていたんですね。) |
N妻: |
大好きなの。(笑)職人さんの技って、1日見ててもあきない。 出来たら、その日だけ弟子入りして、手伝わせてくださいって(笑)言いたくなるくらい、好きなのね。 |
石井: |
現場でそういう話したことあるよね。そしたら、大工さんが「いや、高い物につくから、だめだ」って。(笑) |
N妻: |
植木屋さんが来たら、どうやって、この木を植えるんだろうって思って、子どもって、じっと見てるでしょ。多分、それと同じような感覚だと思うの。手品を見ているみたい。こおんな水をね、いいかげんいいんじゃないかと思うほど、じゃばじゃばあげたりとか、それが、おもしろいのよ。 (うん、うん、とうなずく一同) |
石井: |
やっぱし、みんな好奇心旺盛だよね。 |
N妻: |
それは、そうかもしれない。 見てたおかげで、今では植木、自分で植えられますもの。 |
石井: |
結局、好奇心旺盛だということとか、みんな、めんどくさがらないということとか、基本的なことなんだけど、それをそれぞれの分野で、ただ、やってるだけの話だね、仕事としてね。本来やるべきことをしているだけなんだけども、そこをはしょったり、めんどうくさがったりするから、いろんな問題が出てくるわけね。どんな仕事でも共通してるんだけどね。それを、第3者が見るとよくわかるんだよね。(笑)おまえ手抜き、やってるだろうって。めんどくさがってない?みたいな。 基本的で大事なことだと思うんだけどね。 |
N妻: |
やっぱり、家が出来てくるのが楽しみだから、(実際の)今週の工程表がきまったら教えてくださいって、ファックスしてくださいって、そうするとOさん、すごいまじめな方なんで、東京に送ってくれるんですよ。そうすると、ここで、何の作業が入る、ここで、何の工事が入るというのがあるから、この工事が終わると、ちょっと前に行った時と変わってるかもしれないって、わかりますよね。床を張りますとか、窓が入りますとか。それをねらって、見に来るわけですよ。(まるで、現場監理ですね)(笑) だから、それぞれの工程を楽しみつつ、家ができてくる。 |
石井: |
だって、ゼロから、スタートしているわけだから、これが、本物で建ち上がってくるわけだからね。 |
N妻: |
もう、楽しくって、楽しくってね。 |
石井: |
人がたくさんいて、それで、どんどん、どんどん、様変わりしていくわけじゃない。それを見ない手は、ないよね。こちらは、仕事だから当たり前なんだけど。建て主としては、当然の話で、その時だけしか見られないんだから。 |
N妻: |
下のね、床暖張ってる時に、電気屋さんが来た時は、どうやってはるんだろうとか・・・ (もう1軒家、出来そうですよねぇ。)(笑) |
N夫: |
家みたいな大きいモノだろうが、こんな小さいモノだろうが、モノをつくるということは、基本的には、楽しいことですよね。 |
N妻: |
つくるとは、違うけど、京都のお寺で、昔彫った写経の版を摺ってる職人さんがいたんですよね。私たちが二十歳そこそこぐらいの時に旅行で行ったとき、おじいさんが一日中それをやってたんだけど、その仕事を見ているだけで、一日いいの。楽しくて。(笑)でね、若い人もひとりやっていて、その人は、扇風機にあたってね、やっているんだけど、おじいさんは、汗かいてもなんでも黙々とやってて、それが楽しいから、こっちも一日とは、いかないまでもかなりの時間ふたりで、もうね、ずっ〜と黙ってみてたら・・・1枚くれた。(笑) (もう、いなくならないかなとおもったんだよ(笑)) |